
搭乗者傷害保険は外して良い!
複数の保険がセットされている自動車保険(任意保険)。その中でも医療保険に近い性質を持つ「搭乗者傷害保険」は、どう扱って良いのか判断に迷いやすい部分です。
「ローコストで確かな安心」をコンセプトとする当サイトでは、この搭乗者保険は不要と判断しています。
なぜなら人身傷害保険と内容が重複するからであり、搭乗者傷害保険で補償を上乗せするくらいならむしろ生命保険(死亡保障保険)を手厚くするほうが合理的だからです。
そのくわしい理由、そしてそもそも搭乗者傷害保険や人身傷害保険とはどんなものであるかを以下に述べていきます。
搭乗者傷害保険とは?

そもそも自動車保険(任意保険)は複数の保険がセットになった商品であり、その構成はどの損保会社でもほぼ共通しています。
自動車保険の主な商品構成と、当サイトのおすすめプランを以下に挙げます。
当サイトおすすめプラン
対人賠償保険:無制限
対物賠償保険:無制限
人身傷害保険:3000万円
搭乗者傷害保険:不要
車両保険:状況によって必要
必要な特約
★弁護士費用の補償
★対物超過修理費用の補償
★ファミリーバイク特約(原付バイク所有者のみ)
※「無保険車傷害保険」と「自損事故保険」は自動セットされるので検討対象外。
搭乗者傷害保険はこうした保険セットのひとつに含まれるものであり、ケガや入院通院、死亡などに応じて決まった額の保険金が支払われます。
※搭乗者傷害保険(特約)の主な例
ソニー損保
- 傷害一時金:
- 事故日から180日以内に入院・通院した場合に支払われます。
- 入通院日数が4日以内の場合:1名ごとに1万円
- 入通院日数が5日以上の場合:1名ごとに10万円
- 死亡・後遺障害保険金:
- 事故日から180日以内に死亡または後遺障害が生じた場合に支払われます。
- 保険金額は500万円、1,000万円、2,000万円、3,000万円から選択可能です。
イーデザイン損保
- 医療保険金:
- 事故発生の日から180日以内に治療を受けた場合に支払われます。
- 治療給付金:1万円
- 入通院給付金:5日以上の入院・通院で5万円
- 死亡・後遺障害保険金:
- 事故発生の日から180日以内に死亡または後遺障害が生じた場合に支払われます。
- 死亡保険金:保険金額の100%
- 後遺障害保険金:保険金額の4%~100%
- 重度後遺障害特別保険金:保険金額の10%(限度額100万円)
- 重度後遺障害介護費用保険金:後遺障害保険金の50%(限度額500万円)
損害保険というよりも、医療保険に近い性質を持つものと考えればわかりやすいでしょう。
人身傷害保険と内容が重複する!
「ケガや死亡に対して保険金が支払われるなら、搭乗者傷害保険は必須なのでは?」
と、つい思ってしまいそうですがそれは必ずしも正しくはありません。
なぜなら自動車保険の中には人身傷害保険があるからです。
搭乗者傷害保険がケガや入院通院、死亡に応じて決まった額の保険金が支払われるものであるのに対して、人身傷害保険は自分や同乗者が受けた損害がすべて補償されます。
人身傷害保険でカバーされる主な範囲
★入院や通院などの治療費
★仕事を休んだぶんの収入保障(休業補償)
★慰謝料
例えば事故を起こして1000万円の損害が発生し、自分側にも3割の過失が認定されて300万円の負担が発生したとします。
こんな場合でも人身傷害保険は300万円をすべて補償してくれます。
現在の自動車保険において自分側の損害をカバーする主役は人身傷害保険であり、搭乗者傷害保険はその上乗せ補償という位置づけなのです。
例えばソニー損保の公式サイトでも「搭乗者傷害保険は人身傷害保険の上乗せ補償としてお考えください」と明記されています。
もともと、かつての自動車保険には人身傷害保険は存在せず、ケガや死亡の保障は搭乗者傷害保険によって主にカバーされてきました。
しかし、1990年代の自動車保険の自由化・サービス競争の中で、自分側のすべての損害をカバーしてくれる人身傷害保険が登場して各社のスタンダードとなっていきました。
搭乗者傷害保険はいわば昔の名残のようなかたちで、人身傷害保険の上乗せ的な位置づけとなって残ってきた保険なのです。
「ケガや入院を補償する搭乗者傷害保険」と言えば聞こえは良いのですが、必須のものというわけでもないのです。
搭乗者傷害保険を「上乗せ」するなら生命保険を手厚くすべき

「搭乗者傷害保険をつけても保険料に大きな違いはない。いざという時により手厚い保障が得られるのでつけたほうが良い」
そうした理由で搭乗者傷害保険を上乗せ保障としてつけておくことをすすめる意見も一部には見られます。
搭乗者傷害保険の保険料は年間で約2000~3000円です(死亡保障1000万円の場合)。確かにこれくらいの負担で治療費や死亡保障がが上乗せされるのは心強いと言えるかもしれません。
さらに、人身傷害保険にはない搭乗者傷害保険のメリットとしては「もらえるスピードの早さ」が挙げられます。
人身傷害保険が損害を認定してからでないと保険金を支払わないのに対し、搭乗者傷害保険は入院や通院、死亡などの事実が確認されるとすぐに保険金が支払われます。
★年間2000~3000円程度の上乗せで補償を手厚くできる
★保険金がすぐ支払われる
これが人身傷害保険のメリットです。
ただし、先に挙げたソニー損保やイーデザイン損保の基準を見てみるとまず入院や通院に対しての保障は1~10万円となっています。アクサダイレクトでも最も大きなケガの補償は頭部の神経損傷・断裂の100万円です。
後にこれらの金額は人身傷害保険でカバーされるわけで、搭乗者傷害保険を「一時的な緊急補償」と位置づけるなら貯蓄でも十分カバーが可能です。
「死亡保障1000万円」は確かに大きな金額ですが、そもそも死亡保障は自動車保険ではなく生命保険(死亡保障保険)にこそ求めるべきです。
自動車保険について考えるとつい自動車事故によるケガ・死亡ばかりに目がいきがちですが、そもそも私たちのリスクはそれだけではありません。
死亡原因全体の中で自動車事故が占める割合はわずか5%未満です。
自動車事故による死亡に限定して補償を上乗せするくらいなら、生命保険の補償を上積みするほうがより合理的です。
つまり搭乗者傷害保険はケガであれ死亡であれ「ないと困る」という類のものではないのです。
まとめ:搭乗者傷害保険は不要!
自動車事故によるケガや死亡を補償する搭乗者傷害保険は人身傷害保険の上乗せ的な補償であり、決して必須のものではありません。
自動車保険で「ローコストで安心が欲しい」と考える場合にはこの保険は外すことを検討し、補償の上積みが欲しいなら生命保険(死亡保障保険)の上積みを考えてみることをおすすめします。